体感するアート

私がパリ留学を通して、気付かされたことの最も大きなものがアートの魅力です。

美術への造詣など全く無かった一学生が、アートの本場であるパリにしばらく滞在し、ヨーロッパ各地の美術館を訪問する中で芸術の力に圧倒され、完全に魅了されてしまいました。そもそもパリは、街そのものがアート作品です。

美術作品は、本物を見なければ本当の魅力は分かりません。展覧会も直接その場に足を運ぶことで、展覧会を構成した学芸員の見方やねらい、主催者が意図するテーマを理解することができます。展示方法を通して、新しい発見もあります。美術館の建造物そのものがアートだったりします。展覧会は、作品単体ではなくトータルで鑑賞するものであり、「体感するもの」です。

日本にも素晴らしい美術館が数多くあります。たとえば、箱根の大自然の中にある「ポーラ美術館」。印象派の画家たちの多くは「戸外」で移ろいゆく光、空気、水面、緑を描きましたが、ここでは都市を離れた印象派の画家たちと同じ境遇・環境で、印象派の傑作を味わうことができます。

美術館のすぐそばには遊歩道があり、森の散策をしながら、屋外で描き続けた画家たちの思いに寄り添うことができます。この美術館トータルとしてのコンセプトが素晴らしいと思います。

美術館に直接足を運ぶと、そこでは毎回必ず新しい発見や気づきがあります。この素晴らしい体験の魅力は、一度味わうと離れることはできません。